第19話「悪魔の乳房」

「どうやら向かってきているのは、たった1人の様だな。」

カスティニャダは、剣を頭上に掲げて大袈裟な構えをとっている。

 

その刹那、樹冠から沢山の木の葉が死神の頭上に降ってきた。

ガッガッ、ガキン

ドシュ!

 

死神は最初の連撃を防いだが、

アマルの素早い追撃を防ぐ事は出来なかった。

 

カスティニャダ「やったか。

奴にはしっかり働いてもらわないとな。」

 

アマルの刃は、しっかりと標的の身体の中心を貫いている。

 

ロレンツォ「・・いや、え?!

身体に風穴が空いてるのに、まだ攻撃してますよ、あの死神!」

 

死神は致命的な一撃を受けたにも関わらず、そのまま攻撃を繰り出している。

 

しかしアマルも怯む事なく、応戦している。

 

死神は鎌の様な長柄の二つの斧で挟み込む様に攻撃を繰り出した。

 

アマルは飛び上がり、縦に高速回転しながら

相手を切り上げる様に攻撃を繰り出した。

 

死神は間一髪で其れを躱すが、死神の被るフードは切り裂かれた。

 

フードが死神の両肩に等間隔でハラリと横たわると、

二つの顔が現れた!

山道に単独で突入してきたのは、グワノ兄弟だった。

 

カスティニャダ「そういうカラクリか、敵は2人。」

 

ロレンツォは目を輝かせている。

 

グワノ兄弟「分かるぞ・・我らと同じ奪われし者か。

おまえの纏う空気が物語っておる。」

アマルはただ怨念の様な眼差しをグワノ兄弟に向けている。

 

グワノ兄弟は互いの足を軸に回転しながら竜巻の様に

アマルに攻撃を繰り出した。

 

カスティニャダ「なるほどな、あやつらお互いの片足がないのか、器用なものよ。」

 

ロレンツォ「2体対1か。

加勢にいった方が良いですかね。」

 

カスティニャダ「いや、アマルの無軌道な攻撃に加勢するのは危険だ。」

 

ロレンツォ「相手が多勢なら細い道で、

こちらの方が数で上回るなら

僕たちがいるこの広いスペースで戦うのは有利ではあるけれど。」

 

カスティニャダ「ああ、決着をつけるなら

ここに引き込むべきではある。」

 

アマルが片方の背後に回ったかと思えば、

片方の者が位置を移動しアマルに正対してくる。

 

まるで1人の者が分裂しては、

絶えずアマルに向き合っている様であった。

 

カスティニャダ「なるほどな、この相手なら俺たちが加勢できるかもしれない。」

 

ロレンツォ「何か見えたのですか?」

カスティニャダ「ああ。

アマルが不規則なリズムで攻撃を繰り出すのに対し、

あいつらはピッタリ息が合っている反面、リズムが規則的だ。」

 

ロレンツォ「なるほど、彼らの動きのリズムを掴めさえすれば、

僕たちが加勢して決定的な一撃を加える事ができるって事ですね。」

 

「そうだ。

俺たちならば可能であろう。」

カスティニャダは口笛を吹いた。

 

ヒュンヒュン、ドン、ドン、シュ!

 

アマルはバク転を繰り返しながら、

グワノ兄弟の攻撃を交わしつつ、カスティニャダ達の待機するスペースまで移動を試みる。

 

ヒュンヒュン、ドン、ドン、シュ!

 

カスティニャダ「見るのはアマルの動きでなく、あいつらの足元だ。やれるな?」

 

ロレンツォ「生け捕る訳ではないので、楽勝ですよ。」

 

アマルたちが、カスティニャダ達のスペースまで近づいてくる。

 

カスティニャダたちの間合いまで、あと少し。

 

グワノ兄弟は、同じタイミングで足を切り返した。

 

カスティニャダ「今だ!」

 

アマルの一撃を交わすグワノ兄弟達の

各々の心の臓に刃が迫る。

 

ビュッ!

 

グワノ兄弟はお互いの身体をあり得ない方向に曲げて、カスティニャダ達の突きを躱わす。

 

カスティニャダ「チッ。開くぞ!」

 

ビシャー!

カスティニャダとロレンツォの顔には血飛沫がかかった。

 

カスティニャダ達は突きを繰り出した剣をそのまま

外に開き、

グワノ兄弟達の各々の利き手にダメージを与えた。

 

カスティニャダ「手応えはあったな。」

 

即座にグワノ兄弟は切られてない方の腕で互いの肩を組み、アマルが先ほどした様にバク転しながら後退して行った。

 

アマルが追撃で連続攻撃を繰り出したが

辛うじてグワノ兄弟は躱し、アマルたちとの間隔を保った。

 

突如グワノ兄弟は各々の口大きく開け、

袋を吐き出す。

 

ドジュルー!

 

カスティニャダ「やめい、アマル!」

 

ボン!!

 

カスティニャダの制する声よりも早くアマルはそれを切り刻んでいた。

 

辺りは煙に包まれた。

 

カスティニャダ「やはり目眩しか・・」

 

煙が晴れた頃には、グワノ兄弟の達の姿が山道にはなかった。

 

ロレンツォ「あんな手があるなんて。

ただ、口から物を吐くなんて芸当、僕にはできないな。」

 

グワノ兄弟の突入以降、山道には誰も現れる事はなかった。

 

 

-キラクラの丘中腹の拠点-

ガンガス「くっ・・情けない。

足を挫いてしまうなんて。」

 

ガスパル「ガハハ!

あの様な吹き飛ばされ方をして、それだけで済んだのなら良しとするべきよ!」

 

ガンガス「・・・」

 

ガスパル「ただお前も言っていた様に、アルミニウス殿は他勢向きじゃな。

相手を吹き飛ばす攻撃が上手いと見える。」

 

ガンガス「ああ、あいつの攻撃は

相手に触れてから力を込めるといったものだ。

見かけは派手だが俺たちの防具なら致命傷にはなりにくいだろう。」

 

ガスパル「だな。

そして、リーチはあるが初速は遅い。」

 

ガンガス「多勢同士の争いならば、そのデメリットも補えるといった所だ。」

 

ガスパル「まっ、原住民達のナマクラな武器に適した戦い方だとも言えるじゃろう。」

 

ガスパル「ああ。

しかしあいつが鉄製の武器を手にしたなら、かなり危険ではあるな。」

 

ガンガス「ガハハ、違いない。

どうやら、話によるとあの青い布の蛮族は、この大陸で行われた大規模な戦争で活躍した

総大将の息子だという事だ。」

 

ガスパル「どうりでな、他の奴とは凄みが違う訳だ。」

 

ガンガスは立ち上がった。

 

ガスパル「何をしておる?」

 

ガンガス「まだまだ俺はやれる!」

 

「だめだ。

お前は休んでおれ。これは責任者としての命令だ。」

ガスパルは凄みのある顔をして言った。

 

ガンガス「・・・」

 

セペダ「いいじゃないですか?

仕事はしっかりしたんだし、報酬も貰えて

しばらく休めて羨ましいですよ、私は。」

 

ガンガス「ふん。」

 

ガスパル「どちらにしてもな、今はお前に出番はない。」

 

ガンガス「はっ?」

 

ガスパル「マエストロ殿の指示で、

ここでの作戦はワシらの騎馬隊での応戦がメインとなった。」

ガンガス「奴ら相手に騎馬隊だと?

随分な力の入れようだな。」

 

ガスパル「バルディビア殿の言を借りれば、これは戦争でもあるが商売だ。

万に一つ負ける事はないであろうが、

無駄な損失は避けねばならぬとのお達しだ。」

 

アロンソ「申し訳ない・・私が至らぬばかりに。」

 

ガスパル「しかしカラコール兵が敗れ去るとはのぅ。

これは侮れんぞ!

ガハハ!」

 

ガスパルは豪快に笑いながら、さらにガンガスを諭す様に語りかけた。

「しかもな、またあの青いのが先陣を切って、迫っておる。」

 

ガンガスは一呼吸おき口を開いた。

「確かに通常通りヤナクナを前線に立たせていては、あの相手を起点にして迫ってきた場合

恐慌状態が伝播しイタズラに兵を失いかねないか・・」

 

ガスパル「その通りじゃ、流石ただの戦闘狂ではないな。

情報は出揃った。

ここはワシらが働かねばいかんじゃろう。」

 

アロンソ「ガスパル殿、そろそろ支度をしなくては。」

 

ガスパル「そうじゃの。

気を引き締めて作戦にかかるぞ!

セペダよ、油断はするなよ?」

 

セペダ「ハハハ・・」

 

 

-キラクラ中腹-

「ロロローロロ!」

 

ドゴっ!!

多くのヤナクナ兵が吹き飛んでいる。

 

「ひぃ、アウカマンがやってくるぞ!」

 

ドゴッゴッ!

 

スペイン兵「ぎゃー」

 

ガルバリノ「しかし、妙だな。

一見自然な流れにも見えるが

ここまで前線を下げる必要があったのか?

ここでやつらが対峙する意図はなんだ?」

 

ドシュシュシュ!

 

ミジャラプエ「アウカマンの突破力と、お前の計らいに恐れをなしているのじゃろう。

やつら警戒しておるわ、ワシに対する視線を感じるぞ。」

 

ガルバリノ達、クリニャンク軍もアウカマンの軍と合流して、中腹に来ていた。

 

ガルバリノ軍の礫、ミジャラプ軍の矢も確実に相手を無力化していっている。

 

ゴワーン!!

 

突如ドラの音が響き渡る。

その傍には、ガスパルを先頭に馬に乗った一団が整列していた。

 

ガスパル「良いな。

アロンソ殿、セペダ、ワシらは変わるがわる

あの青い原住民を牽制する。

討ち取ろうとは思うな、奴の勢いを削ぐだけで良い。」

 

アロンソ、セペダ「ハッ!」

 

ガスパル「他のものは、周囲のものを変わるがわる

削り取ってゆけ!

ただし、一定のリズムでローテーションはするな!

多少の隙があっても良い!

渋滞を引き起こす様な状況は避けよ。」

 

パカラ、パカラ、パカラ!

 

アウカマン(先程のやつが向かってくるな。後ろにも2人。)

 

ガスパルは勢いよくハルバートを振るう。

 

アウカマンは素早く攻撃を交わしつつ、2番目に控えるアロンソの攻撃も躱す。

 

セペダが上段からハルバードを振り下ろすと、紙一重で後ろに下がり、これも鮮やかに躱した。

 

ガスパル「いくぞ。」

再び迫るガスパルたち。

 

幾度となく同じ様な攻防が繰り返される。

 

ギャー

 

アウカマンの周囲の兵達は、先ほどまでとは逆に

ガスパルの騎馬軍たちに削り取られていっている。

 

アウカマン(これはまずい・・3体の攻撃にワシは身動きが取れぬ・・その間にも仲間が・・)

 

ガルバリノ「まずいな。

ここは俺たちの出番だ。あの3体を狙うぞ。」

 

ガルバリノ達はガスパルたちの馬の足を目掛けて縄礫を放った。

 

ヒュルルー

 

ドシュ!ボトッ・・

 

ガスパル達は騎乗しながら、縄礫をハルバードを使って処理し、アウカマンに変わらず攻撃を仕掛けている。

 

ガルバリノ「何?!

あの様な長物を器用に扱って、俺たちの攻撃を防ぐとは。」

 

ガスパル「流石に、銃弾ならそうはいかぬが

その程度の武器ならばしっかり見切れるぞ。

ガハハ!」

 

ガルバリノ「構わぬ、続けるぞ!」

 

ガルバリノの力強い言葉により、

臆する事なく、淡々とガルバリノ兵達は攻撃を仕掛けた。

 

ガスパル「ほう、あそこにも凄みが。

しかし、アルミニウス殿はあの得物でワシらの攻撃は受けぬか。

まともに受ければ、あちらの武器が壊れる事はわかっておるのだな。」

 

ガスパルの騎馬兵団により、少しづつアウカマンだけが孤立する図式が浮かび上がってきた。

 

ガスパル「良い頃合いじゃ、少し遊んでみるか?」

 

ガスパルは、アロンソとセペダに何かを語りかけた。

 

今度はアロンソは長槍を手に、セペダはハルバートを回転させながらアウカマンに突進した。

アウカマンは旋回するハルバートをすり抜けると、

そこにすかさず回転のかかった長槍が飛んできた。

 

アウカマン(何?!槍があんな速さで飛んでくるのか?)

 

アウカマンは長槍をなんとかのけ反って躱した。

 

「貰ったぞ!!」

ガスパルはニヤリとしながら叫んだ。

 

その先にはいつの間にかガスパルが詰めより、

今にもハルバートを振り下ろそうとした。

 

アウカマンはガスパルの攻撃を躱す姿勢に入ったが、矛先はアウカマンでなく得物の方に向かっていた。

 

アウカマン(しまった!)

 

そこにミジャラプエが矢を放つ!

 

ドンッ!

 

ミジャラプエ「何!何故あやつがここに?」

 

そこには攻撃を繰り出し戻っていたはずのアロンソが大きな盾を持ち待機しており、

盾を地面に突き刺し矢を防いだ。

 

バラバラバラー

硬い木が崩れ去る音がした。

アウカマンの周りには木片が散らばっていた。

 

アウカマン(確かに殺気はこちらを向いておったのに、狙いはこちらの得物であったか・・)

 

アウカマンは対比を試みるが、背後にはセペダが回り込んで構えている。

 

セペダの佇まいは、相手を仕留めるというよりは、突破させない事に徹している様だった。

 

そして、一呼吸おくとガスパル達はアウカマンの周りを回り始めた。

 

ミジャラプエ「くっ、この様に回られては矢を射掛ける事は出来ぬ。

矢がアウカマンに当たりかねない。」

 

いよいよ、大詰めじゃな。

 

アウカマン兵「外側からアウカマン様を援護せよ!」

 

「ワァー」

 

ガスパル兵「そうは行くか。

ガスパル殿達をお守りしろ!」

 

パカラパカラ

 

ビュオ!ビュオ!

 

ガスパル達はアウカマンの周りを旋回しながら、変わる攻撃を仕掛ける。

アウカマンを中心に戦の渦が展開している様な様相になっている。

 

外側にはアウカマン兵の円、続いてガスパル兵の円、その内側にはガスパルとニ騎士が旋回し、アウカマンが中心にいる形になった。

 

ガスパル「流石のアルミニウス殿もそろそろ疲れが見えてきたな。」

 

ガスパル「セペダよ!今宵は美味い酒が飲みたいか?」

 

セペダ「ハッ!もちろんです!!」

 

ガスパル「止めはお前に任せる。」

 

セペダ「かしこまりました!!」

 

ガスパル(ワシらの中でリーチは最も短いが、大味なワシと違って、正確な攻撃ができるのはセペダじゃ。ここはアロンソ殿と2人でやつに花道を作ってやるかの。)

 

アウカマン(むっ。奴等包囲を解いて一斉に仕掛けてきたか。)

 

ドカラ、ドカラ、ドカラ

 

ガスパル「ゆくぞ!アロンソ殿!!」

 

アロンソ「ハッ!」

 

アウカマンは短く深く一呼吸吸った。

 

「ロロローロロロ!!」

 

ガスパルとアロンソの圧力のある刃が迫る。

 

シュンシュン!

 

アウカマンは巨体に似合わない速さで動き、2人の刃を躱す。

 

セペダは2人の渾身の攻撃が躱わされても動揺する事なく、目の前の標的を絶命する事に集中している。

 

アウカマンの目にセペダの刃が映る!

 

シュオン・・

 

セペダの刃はアウカマンの喉元でぴくりとも動かなくなった。

 

「えっ?手??」

セペダのハルバートの柄に大きく分厚い人の手が映った。

 

「ローオウ!!」

奇妙な甲高い声が響き渡る。

 

ドシャン!!!

 

セペダは馬から転落した。

 

アウカマンは寸出の所で、セペダのハルバートの柄に手を伸ばし、攻撃を止めただけでなく、そのまま武器をもぎ取ってしまった。

 

ガスパル「ガンガスよ、縁起でもない事を言うもんでないぞ。

アルミニウス殿が近代武器を手にしてしまったではないか、ガハハ!」

 

シュン!

 

一線、光の軌道が空を切る。

ドワッ!!!!

 

ガスパル兵や馬達が、様々な部位を切断されながら吹き飛んだ。

 

辺りは時が止まり、鎮まりかえっていた。

 

ガスパル「ほう、見事じゃのう。」

 

そこで2人の者が声上げた!

 

ガスパル「退けい!!」

ガルバリノ「突撃だー!!」

 

と、その時だった!

 

ドシュオーン!!!

 

悪魔の様な轟音が突如響き渡った!!

 

ガルバリノが上空を見上げると、

何かが放物線を描き、丘の麓へ向かっていった。

「なんて、飛距離だ・・」

 

 

-キラクラの丘麓-

「報告です。アウカマン様の進軍が丘の中腹で

止まってしまった様であります。

ただし、アウカマン様の軍の士気は依然として高いとの事です。」

 

マジョケテ「ほう、もう一押しかの。

パルタの軍はどうした?」

「もうじきアウカマン様の軍と合流する模様であります!」

 

マジョケテ(丁度今から動けば、おいしとこを頂けそうだな。)

 

マジョケテ「道を開けい!!

我は梟王マジョケテなるぞ!

ワシ自ら前線まで赴き士気をさらに上げてやるわ!!」

 

「ハハーッ!」

 

「進めい!!!」

マジョケテは勇壮に進軍を開始した。

 

マジョケテは進軍を一旦やめる合図をした。

その場所には、既にアウカマン達が進軍し、意味をなさなくなった敵軍の柵だけが並んでいた。

 

マジョケテ(ここで士気をあげておくかの。)

 

「皆の者!!敵は目前である!!

敵は何やら見慣れる物を携えてはおるが、

ワシらの突撃の前では無用の長物である。」

 

フン!

 

マジョケテは、不可思議な装飾の施された目立つ柵を

勇ましく引っこ抜くと

天高く掲げ力強く放り投げて兵達にアピールした。

 

ドザァー。

 

「おおおおー!」

 

「ワシらモルチェ族の恐ろしさとくと

味わわせてやろうぞ!」

マジョケテが改めて檄を飛ばした。

 

その時だった、

 

ドシュオーン!!!!!!

聞き慣れぬ轟音が突如響き渡った。

 

マジョケテ「何じゃこの音は?」

 

「マジョケテ様、あれは!!」

 

マジョケテで右前方の上空に大きな石の様なものが降ってくるのが見えた。

 

マジョケテ「なんじゃこれは?噂の雷か?」

 

マジョケテの眼前でさらに塊は大きく映り迫っている。

 

マジョケテ「だが、残念じゃのう。

ワシには当たらぬわ!」

 

マジョケテは老体とは思えぬ、

体捌きで横に逸れた。

 

ドガボワッ!!

 

マジョケテの隣に塊は墜落したが、それだけでは終わらなかった

マジョケテ「な・・」

 

グシャっ!!!

 

バタっ・・

 

塊が砕け無数の破片がマジョケテを襲った。

 

マジョケテの身体の所々は吹き飛び、

やがて身体は地面に突っ伏した。

 

「マジョケテ様ー!!!」

 

 

-丘の頂-

「エグいな・・標的は絶命したでしょう。」

アルデレテは望遠筒を覗き込みながら呟いた。

 

バルディビア「そうか。

艶かしい軌道であった。

まるでおなごの腰の様である。」

 

エレロは乳首を模した突起のある蓋を持つと、

臼砲を摩り微笑んだ。

 

臼砲には、二体の堕天使が
豊満な乳房を模した筒にしがみついてる様な
装飾が施されていた。

 

一体は幼子で、もう一体は乳離れを
とうに終えている様な娘が描かれている。

 

バルディビア「エレロ君の腕前、

感服したぞ!」

 

エレロ「何よりこの追い風があってこそ、
バルディビア様の強運の賜物ですね。
私もあやかりたいものです。」

 

バルディビア「ハハ、

貴君の腕と調達能力があってこそ。
これで豪快に遊んでくるがよい!
今回の砲弾の金も含まれておる。」

 

そう言うとエレロに金貨の袋を渡した。

 

エレロ「こんなにですか!

ありがとうございます!!」

 

「ん?」
アルデレテは崖に向かって、暗器を投げた。

すると鳥の羽の様なものが舞った。

 

バルディビア「どうしたのだ?」

 

アルデレテ「気のせいか・・」

 

バルディア「あちらは崖であろう。
流石に誰も上がってこれまい。」

 

アルデレテ「そうですね。

どうやら鳥の様でした。」

 

バルディビア「しかし、素晴らしい逸品じゃのう。
強風を感知する堕天使達の仕組みも洒落ておる。」

 

バルディビアは臼砲を改めて見つめた。

堕天使達はまるで生きてるかの様に
翼をバタつかせ続けた。

アラウコの叫び/本編

寄付(donation)

コメント