第17話「カタツムリ退治」

-マジョケテ軍前線右翼-

 

クリニャンクとミジャラプエの連合軍は、

漆黒の四騎士アロンソ、セペダの軍と対峙していた。

 

軍が抜かれれば、

中央前線軍が挟み撃ちされてしまう為、

とにかく相手を食い止める事に尽力していた。

 

ドシュルー

 

ミジャラプエは一度に矢を3つ番えながら、前線のヤナクナたちを器用に殲滅してゆく。

 

ガルバリノ「相変わらずの名人芸だな。」

 

ミジャラプエ「ふむ、相手もこちらと同じ意図の様じゃな。

迂闊に攻めて来ない。

ひとまずはこの状態を保つと言った具合か。」

 

ガルバリノ「どうだろうな。

噂に聞く、雷を一向に撃ってこないのが気にかかる。

こちらも距離を保ってはいるが、

話では俺たちがいる辺りまで飛距離が出る兵器もあると聞いている。」

 

ミジャラプエ「その点は心配しておらん。

ヌシの鷲の目があるしな。

タイエルの話では雷を放つ前に

まず点火しなくちゃいけな代物らしいしの。

お前の合図で避難すればなんとかなるじゃろ。」

 

ガルバリノ「まあな。夜目は効かなくても火花くらいは分かる。

絶えず目は光らせてはいるが、あちらさんにはまるでそんな素振りがない。」

 

ミジャラプエ「何か意図があるのかのぅ。」

 

ガルバリノ「かと言って、距離をとった瞬間に

一斉に例の雷を打ち込まれたら大打撃は免れないだろう。

絶えず前線の距離感は保っていたい所だ。」

 

 

-バルディビア軍前線左翼-

セペダ「アロンソ様、どうやらガスパル様たちは

奥深くまで切り込んだらしいですが、

一旦引いて体勢を立て直している様です。」

 

アロンソ「どうやら今までの相手とは少し勝手が違う様ですね。

相手に勢いづかせる訳にはいかないですし、

カラコール兵を投入しましょう。」

 

セペダ「カラコール兵ですか?今回火器の使用は禁止というお達しがあったと思いますが・・」

 

アロンソ「銃の使用までは許可が出ております。

と、それで相手の出方を伺うとしましょう。」

 

 

-マジョケテ軍前線右翼-

パカラ、パカラ、

ドン!ドン!ドン!ドン!

 

クリニャンク兵が、馬上からの銃の攻撃に次々と倒れている。

 

クリニャンク「何事?!」

 

アロンソの騎兵達は全員で
まるで一つのカタツムリの殻を描く様に
馬を器用に操り旋回し
代わる代わる銃撃を繰り返し出した。

ガルバリノ「どうやらあちらさんは変化をつけてきたようだ。」

 

クリニャンク兵「伝令です。

やつらは例の獣に乗りながら、筒状のものから礫を飛ばしきております。

しかも途切れる事なく、代わる代わる攻撃を仕掛けてきます。」

 

ミジャラプエとガルバリノは前線の様子に目を凝らした。

 

ミジャラプエ「ありゃ初めて見たらリャマに人の上半身がついてる様に見えるかもしれぬな。」

 

ガルバリノ「違いない。

ふむ、なるほどな。

あやつらの武器はすぐに発射できるわけではなく、かつ連射できる様な代物ではないって事か。」

 

クリニャンク「?」

 

ミジャラプエ「あの様に代わる代わる攻撃してくるのは時間稼ぎをする必要があるという事じゃな。」

 

ガルバリノ「じいさん、長生きしそうだな。

まだまだ頭の冴は健在か。」

 

ミジャラプエ「バカにしおって!

しかし、見事なものだな。

あの様に獣を操り

器用に旋回しながら攻撃してくるとは。」

 

ガルバリノ「いや、よく観察してみると

あれはこけおどしだな。

そんなに円滑に連続攻撃はしてる様には見えないな。

時折礫の発射される間隔も隙が生じている。」

 

ミジャラプエ「確かにあれだけ事を上手く連携させるには

各々がかなりの練度が必要のようじゃ。

見た所少なくとも6つに分けて、編隊を組む必要がありそうだ。

上手く突撃させれば崩せそうじゃな。」

 

クリニャンク「さて、どう対処したら良いものか・・」

 

ミジャラプエ「そうじゃのう、
ワシが矢で軸となってる者どもを
仕留めるのもありじゃな。」

 

ガルバリノ「悪くない考えだ。
主要な者どもを無力化してしまえば、
あの隊列は脆く崩れ去る可能性が高そうだ。」

 

クリニャンク「ただ、上に乗ってる人間は武装していて、
タイエル殿の話ではとても矢が通らなそうだな・・」

 

ミジャラプエ「ふむ、
獣の方を狙うのが良さそうじゃのう。」

ガルバリノ「事はそう簡単じゃないぞ、じいさん。
主要な者達の獣の大きい急所には
防具があてがわれている。」

 

ミジャラプエ「逆に目印になって良いわい。」

 

ガルバリノ「あの獣達の目を狙うしかなさそうだ。
しかし、あの様に素早く動く動物の目を正確に射抜けるのか?」

 

ミジャラプエ「誰に言っておる?
ワシはミジャラプエじゃぞ?
モルチェ族同様、ワシは夜目も効く。
ワシならば一度に両目を射抜ける。」

 

ガルバリノ「ほう、その言葉信じるぞ。
そうだ面白事を思いついた!
とりあえず、じいさんは全体の起点となってるあいつを狙ってくれ。
俺の部隊は隊列の継ぎ目にあたる獣を数匹かたずける。
そうすれば一気にあやつらは渋滞を起こすだろう。」

 

ミジャラプエ「何じゃと?ヌシもやる気か?!
しかも、ヌシだけでなく他の者まで、あやつらを片付けると?」

 

ガルバリノ「そうだ。

後、じいさんはなるべく目立つ感じで

堂々と矢を射てくれ。」

 

ミジャラプエ「何じゃ?ワシに的になれと言っておるのか?!」

 

ガルバリノ「そう、壮大な景色を見ながら星に帰ってもらおうと思ってな。」

 

ミジャラプエ「壮大な景色じゃと?

ヌシ・・何を企んでおる?」

 

ガルバリノ「まあ、見てなって!

と、もちろん相手の矢や礫が飛んできたら躱してくれよな。」

 

ミジャラプエ「言われてなくてもそうするわ!

だがな、まだまだワシは死なんぞ!!」

ガルバリノ「期待してるよ!

ミジャラプエのカタツムリ退治の始まりだ!

これは後世まで語り継がれるぞ。」

 

ミジャラプエ「大袈裟な・・

しかし随分、自信がありそうだな。

まあ、壮大な景色とやら楽しみにしてるぞ。」

 

クリニャンク「ならば、

ミジャラプエ殿たちが事を起こしたら

ワシらは前線を押し上げるとするか。」

 

ガルバリノ「ああ、その辺りはクリニャンクさん、よろしくな!」

 

 

-バルディビア軍前線左翼-

セペダ「思ったより、やつら動揺してませんね・・」

 

アロンソ「この新天地においてカラコール兵にここまで動揺しない原住民は初めてですね。」

 

1人のヤナクナが2人の会話に入ってきた。

 

ニナ「失礼します。お話してもよろしいでしょうか?」

 

アロンソ「許可する。」

 

ニナ「今対峙している群れは、おそらくマプチェ族です。

ここより南の地には、大きな獣が多数生息しおります。

なので馬にも臆する事がないのかと思われます。

かつ、インカ帝国よりはるかに規模が小さいにも関わらず果敢に抗ってきた民族でもあります。」

 

アロンソ「して、マプチェ族というのは戦闘能力も高いのか?」

 

ニナ「個々として突出した者も何人かいますが、

何より集団として団結力が秀でております。

我々がマプチェ族と戦う場合は、常に3倍の兵力で当たらざるをえませんでした。」

 

セペダ「ふーん。通りでガスパル様たちが、凄みが!凄みが!とか言ってる訳だ。

けれど、確実にあちらの兵は減ってきてるし、このままカラコール兵で削っていっても良さそうですがね。」

 

アロンソは一呼吸置き、口を開いた。

「セペダ殿、念の為貴君の軍を

前線付近まで上げておいて下され。」

 

「かしまりました。」

思わずセペダは、アロンソの威厳のある言葉に一つ返事で頷いてしまっていた。

 

セペダ(て、え?!

アロンソ様は何を警戒してるんだ?

いちいちあそこまで移動するの面倒だな・・)

 

セペダはトボトボと前線に移動していった。

 

 

-マジョケテ軍前線右翼-

ガルバリノ「いいか、おまえら。

じいさんが矢を射かけたら、手筈通り頼むぞ。」

 

ガルバリノ兵「へい。

面白い事になりそうでさー。」

 

ガルバリノ「そうだ。

じいさんに壮観な景色を見せてやろうぜ!」

 

ガルバリノ兵「ミジャラプエさんの度肝を抜いてやりしょうや。

ほんと兄貴は、人を驚かせるのが好きですな。」

 

ガルバリノ「まあ、老い先短い

敬愛するじいさんへの贈り物さ!」

 

遠くからミジャラプエが声を張り上げた。

「ガルバリノよ!

そろそろ初めるぞ!」

 

ガルバリノ「あいよー」

 

ドン、ドン、ドン

 

前線では変わらずカラコール兵が、

次々と標的を殲滅していた。

まるで、巨大カタツムリがのしのしと

前線を押し上げている様に。

 

スペイン兵「カラコール兵のおかげで、

うちらは何もしなくて済みそうだな。

後は傷ついたらやつらを処理するだけかな。」

 

セペダ(そうなんだよな。今回アロンソ様側に来てラッキーって思ってたんだけど。

戦狂いのあの2人と違って、無駄な事はしないアロンソ様と一緒ならいつもはほぼ仕事しなくて済むのに・・まあ、軽く用心だけはしておくか。」

 

セペダはおもむろにマプチェ陣営を見つめた。

(ん?なんだあの爺さん・・やけに堂々してるな。

向こうの大将かなんかか?

矢でも射掛けてみるか?

さっさと今日の仕事が終わるかもしれないな。)

 

ザワザワ

 

「何だあの爺さん??」

セペダの周りの兵たちも勇壮に佇む老人の様相に

注目し始めた。

 

 

セペダ(周りのやつらは今頃気づいたか、もう遅い。手柄だけは頂かせてもらう。)

ミジャラプエへに向かって矢を構えた。

 

ミジャラプエ「殺気を感じるのぅ。

随分遠くからでワシの目には見えなくてが、分かるぞい。

ワシを狙ってるものがおるわ。」

 

ドドドドッ

 

変わらず旋回しているカラコール兵たちの起点となるものに、ミジャラプエは気持ちの照準を合わせた。

 

「もうすぐじゃな。」

ミジャラプエは矢を2つ番えて準備に入った。

 

ビュッ!

 

「貰った!!」

セペダの矢は真っ直ぐにミジャラプエの眉間を目掛けて飛んでいる。

 

ミジャラプエは首を傾け矢を射る一連の動作をしセペダの矢を自然に躱わすと、そのまま2本の矢を放った。

 

ビュルルルー

 

セペダ「なんだと?!

なんて幸運なじいさんなんだ。

命拾いしたな。」

 

ドシッシュ!

 

ミジャラプエの2本の矢は、獣の両目を見事に射抜いた。

 

ドサササ!!!

 

起点となる獣が倒れたと同時にカラコール兵が一斉に転倒しだした。

その様はまるで、ミジャラプエの矢が巨大なカタツムリを小さな矢でのしてしまったかの様に映った。

 

スペイン兵「何という事だ!!

あの老人の放った矢が、カラコール兵たちを一撃で何人も倒してしまったのぞ!!!」

 

スペイン兵「なんだあの老人、妖か何か?!」

 

マプチェ兵「ミジャラプエ様が奇跡を起こしてくだされた!!」

 

マプチェ兵「おお、ミジャラプエ様!!」

 

「な・・なんじゃこれは?!

ワシの矢で、獣が一斉に地に伏しておる?

他の獣の目は射抜かれていない様だが・・

ガルバリノよ・・一体何をしたんだ?」

ミジャラプエ自身もその光景に驚いていた。

 

「どうだい良い景色だろ?じいさん?」

ガルバリノはいつの間にかミジャラプエの隣にいた。

 

ミジャラプエ「あ、ああ・・

見事な演出だ。

まるでこちらの兵もあちらの兵もワシを

化け物でも見る様な目で見ておる。」

 

ガルバリノ「どうやら、あちらも信じがたい光景には

化け物の仕業だと理解しようとする傾向がある様だな。

また一つ、あいつらの事を知る事ができた。」

 

ミジャラプエ「所詮やつらもワシらと同じと言うことか。

しかし、どうやってあんな芸当をしたのじゃ?」

 

「それはこれさ!」

ガルバリノのは礫に縄をつけた武器をミジャラプエに見せた。

 

ミジャラプエ「これはヌシの得意とする武器か。」

 

ガルバリノ「そうだ。俺の部隊はこの武器の使い手が揃っている。

よく獣の足を見てみろ。」

 

ミジャラプエは獣を凝視した。

各々の獣の足には縄がまとわりついていた。

 

ミジャラプエ「なるほどな。

隊列の要所要所の獣にその縄を投げ転倒させ、その前後の獣も巻き込まれてた事によって、一斉に倒れて見えたと言うことか。」

 

ガルバリノ「流石じいさん、冴えてるな。

どうだ気に入って貰えたか?」

 

「生意気な事やりおって、あのガルバリノがなぁ・・」

ミジャラプエの口元は小さく緩み、目元には光る者があった。

 

ガルバリノ「なんだじいさん、眠いのか?目が潤んでるぞ。」

 

ミジャラプエ「バカ言うな、まだ仕事が残ってるわ。

クリニャンク殿の援護をするぞ!!」

 

ガルバリノは前線に目をやった。

 

ガルバリノ「ん?!

クリニャンクさん達が思ったより、進めてないな。」

 

 

ドガシャン!!

 

セペダ「なんだ?!

老人の矢が飛んできたかと思ったら、

カラコール兵たちが目の前から消えたぞ!?」

 

セペダは驚きながらも、

即座に神妙な声色で周りに号令をかけた。

「おい、お前ら前線に行くぞ。」

 

クリニャンク兵は、倒れてるカラコール兵たちに襲いかかりながらも、前線を押し上げる様に進軍している。

 

クリニャンク「物凄い光景だな・・

いやいや感動している場合でない。

皆の者ゆくぞ!!」

 

クリニャンク兵「おおお!!」

 

セペダ「お前たちぼさっとしてるな!!

あんなのは妖でもなんでもない。

馬の足をよく見ろ!」

 

スペイン兵たちは馬の足元に縄がついているのに気づいた。

 

セペダ「蛮族どもが知恵を絞って一矢報いた所で、戦況は変わらん。

そこのお前らはカラコール兵を保護しろ、他の奴らは相手の第二派に備えて、腰を据えて縦を構えて迎撃しろ!」

 

クリニャンク兵「クリニャンク様!

敵はすぐに体勢を立て直し、こちらの突進にもびくともしていません。

いかがしましょう?」

 

クリニャンク「なんと!あちらには随分と冷静なものが

指揮をとっている様じゃな。

やむをえん・・ここは直ちに引き返すぞ。」

 

クリニャンク兵は、徐々に後退していった。

 

セペダ(どうやら、向こうの突破力はそこまで大した事ないな。

おそらく突破力のある軍は中央前線に集めたとみえる。)

 

セペダは赤い布を羽織る男が指示を出しているのに気がついた。

 

セペダ「あいつが指示を出してるいるな。

皆の者!!

あの赤い布を羽織る男を捕まえに行くぞ!!」

 

セペダの軍は、後退を試みるクリニャンク目掛けて突進していった。

 

クリニャンクの目前までヤナクナたちが迫っていた。

 

クリニャンクは応戦するも、徐々に追い詰められている。

 

セペダ「お前らはあの赤いのの裏側に回り込む様にして、退路を絶て。」

 

セペダは、クリニャンク兵の根幹となる戦士たちを葬りながら、たちまち包囲網を完成させつつある。

 

クリニャンク「しまった!

後方まで敵が回っている・・」

 

セペダ兵「へへ、ついに追い詰めたぞ。」

 

セペダもまたクリニャンクと目と鼻の先まで近づいている。

 

ガルバリノ「相手の統率力を見誤っていた様だ。

混乱からの態勢の整え方が見事だな。」

 

ミジャラプエ「うむ、あの様な混戦状態では矢も射掛ける事もできぬ・・」

 

セペダ「仕上げだ、一斉にかかれ!」

 

おおおおお!

 

その時だった。

 

セペダ達の頭上から大きな影が伸びてきた。

 

ブシャァ!!

 

セペダの周りの兵たちは頭上から迫る大岩で一気に押しつぶ潰されていった。

 

セペダは大岩を躱し、目の前を直視した。

 

セペダ「なんだ置物??

こいつが兵たちを押し潰したのか?」

 

そびえ立つトーテムの様な何かが、セペダの方まで影を伸ばして立っていた。

 

その刹那、ミジャラプエはクリニャンクのいる方へ矢を放った。

 

辺りは時が止まっている様であったが、その刹那クリニャンクの側に矢が突き刺さった。

 

クリニャンクは我に帰り、安全な場所まで避難した。

 

セペダ「なんだこいつは?人なのか?

丸腰で俺の前に立っている・・」

 

そこには、ガルバリノと共に《南のニ鷲》と呼ばれるタイエルの姿があった。

 

数秒の間を置き、セペダがタイエルに切り掛かる。

 

タイエルは大岩を軽い板でも拾う様に手に取り、セペダの眼前の地面に突き刺し、攻撃を防いだ。

 

セペダが回り込み攻撃を仕掛けるが、タイエルはそこら中に転がる死体を盾にして、セペダの攻撃を防いでいる。

 

セペダ「いつ死体を拾い上げたんだ。

動作はのろそうなのに、なぜ俺の攻撃に間に合う?」

 

シュンシュン、ドサドサ・・

 

セペダが率いた兵達はいつの間にか距離を置かれており、矢の雨の餌食になり死に絶えた。

 

セペダ「これはまずい・・

こんな所に化け物を潜ませていたなんて。

いや、あやつらの最初の狼狽ぶりを見ると

策ではなくて、たまたまの可能性が高い。」

 

タイエルは静かに佇んでいる。

 

深く窪んだタイエルの目は、セペダの方を見ている様だが、目に深い影がかかり、セペダには目線が分からない。

 

セペダ「何を考えているかまるで分からん・・

なんだこの化け物は。

どんな攻撃をしてくるのか、見当もつかない。」

 

タイエルはおもむろに2体の死体を持ち出した。

 

セペダ(何をする気だ?)

 

するとおもむろに自身の目の前に死体を持ってきた。

 

パンパンパン!

 

ドシュドシュドシュ!

 

セペダの後方から銃声が響き渡り、タイエルの持つ死体からは血が飛び散っている。

 

「さあ。」

セペダは落ち着いた声と共に馬上へすくいあげられた。

セペダは男の背につかまった。

 

「怪我は?」

背の主はアロンソだった。

 

騎馬兵を引き連れて、セペダを救出にきていた。

 

アロンソ「盾を上へ。」

 

アロンソの騎馬兵たちは盾を上にかざし、矢の雨を凌ぎながら後退していった。

 

ミジャラプエ「ふむー惜しい。あの位置からでは、奴らの頭上からしか矢を射れぬな。

ただ、もう時期背中を撃てる。

もしくは、獣を狙え。」

 

アロンソ「盾を背に構え、蛇行してください。」

 

アロンソの騎兵達は、盾を背にし蛇行しながら

矢を躱し安全な場所まで避難していった。

 

ミジャラプエは矢を放つのをやめる様に周りの者に指示した。

「なんともこなれた逃走の仕方よ。」

 

一呼吸おき、セペダはアロンソに話しかけた。

「助かりましたアロンソ様。」

 

アロンソ「あの敵をどうみますか?」

 

セペダ「私には測りかねますね。

どんな事をしてくるか、まるで予測がつきませんでした。」

 

アロンソ「そうでしたか。

迂闊に近づくのは危険の様ですね。

当初の予定通り、私たちは前線を保つ事に集中しましょう。」

 

セペダ(美味しいとこだけ、掻っ攫う予定だったんだけどなぁ・・ガスパル様とガンガスさんに嬉々として根掘り葉掘り聞かれそう・・めんどくさ。柄にもなく欲張ってしまったか・・)

 

その後、アロンソ軍とクリニャンク連合軍は、お互いの当初方針通り膠着状態を維持する事になった。

作成中/アラウコの叫び本編

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