第15話「開戦」

マプチェ族とスペインとの戦いの始まりは、

1536年のレイノウェレンの戦いとも言われる。

 

しかし、300年余りに渡るアラウコ戦争が本格的に始まったのはキラクラの戦いからかもしれない。

 

西のモルチェ族、北と南のマプチェ族が集結し、レイノウェレンの時より備えを万全にし、新たな脅威に対していよいよ戦いを挑む。

一方、ラウタロはチリ提督ペドロ・デ・バルディビアの元で心身ともに成長していった。

 

未知の武器、戦術、人々の情報を収集し、新たな脅威の内側から知識を得続けた。

 

 

 

-1546年 サンティアゴ-

ラウタロは剣を抜き、マルコスに飛びかかった。

 

マルコスは落ち着いた眼差しで、ラウタロを迎え打とうとしている。

 

ラウタロは鋭い突きを繰り出すが、マルコスは力強く攻撃をいなした。

 

マルコス「これが君の出した答えか?」

マルコスは剣を高く掲げ、力強い一撃を放つ姿勢に入る。ラウタロを見下ろし、圧力を与えている。

 

対してラウタロは、低い姿勢で地面に近づき、安定感のある構えに切り替えた。

マルコスの目を鋭く見つめ、次の一手を見極めている。

 

マルコスが剣を振り下ろすと、二人の剣が交わり、鋭い金属音が空気を切り裂いた。

 

ラウタロは攻撃を受けながら反撃の機会を窺っている。

 

しかしマルコスの一撃一撃は、

上段から放たれる為、重力も加わりより重い。

 

次第にラウタロの防御が乱れていった。

 

マルコスはそれまでの単調な攻撃から一変して、突如軌道をかえラウタロの足元を狙ってきた。

 

ラウタロは蜻蛉返りをし、その攻撃を交わすと同時に攻撃に転じた。

 

マルコス(そう、まだ体力を温存してるのは分かっていた。肉を切らせて骨を断たせてもらう。)

 

マルコスはラウタロの刃を躱わしきれず、かすり傷を負ったが、予測通りと言わんばかりに空中で無防備になってしまったラウタロに攻撃を仕掛ける。

 

マルコスは剣の向きを変え鈍器の様な扱い方で

ラウタロへ一撃を加えた。

吹き飛ばされたラウタロは、地面へ叩きつけられた。

 

マルコスは地面に横たまるラウタロに剣を向けた。

 

ラウタロ「参った・・」

 

その一言で、二人の張り詰めた空気は一気に溶けた。

 

マルコス「今回初めて君に傷をつけられたな。」

 

ラウタロ「ただ、それも計算のうちだったろう?」

 

マルコス「そうではあるけど、そこまでしないといけなかった。」

 

ラウタロ「上達したってとこかな。」

 

マルコス「そして素直で潔い騎士らしい剣筋だったよ。

君の出した答えもまた一つの生き様だね。

ただフェンイントも入れてもいいとは思うよ、それは全然卑怯な事でないし。」

 

ラウタロ「先程の君の様にか、勉強になるよ。」

「相変わらずやってるわねー。」

フワナが稽古場に入ってきた。

 

ラウタロ「やぁ、フワナ。

今日はグディエルは一緒じゃないのかい?」

 

フワナ「戦が始まるぞーって騒いでて、何かあくせくやってたわ。」

 

ラウタロ(いよいよ、本格的な衝突が始まるのか・・)

 

マルコス「グディエルや僕は今回の遠征の留守番なのに。

ほんと彼は気が早いよ。」

 

ラウタロ「今回の遠征?」

 

マルコス「バルディビア様は緯度の高い場所に都市を建設したいらしくて、ペンコ湾が理想的と判断し、今そこへ向かってるんだ。」

フワナ「無事に辿り着けると思う、ラウタロ?」

 

ラウタロ(スペイン人が言うペンコ湾とは、トゥンベス島よりやや南に位置する辺りのとこだったな・・

おそらく道中でモルチェ族と衝突するだろう。)

 

ラウタロ「もし衝突する事になっても、バルディビア様たちの相手にはならないさ。」

 

フワナ「そうなんだ。

でも、いよいよ本格的に戦になっちゃいそうだけど

ラウタロは平気?」

 

ラウタロ「今はまだそんな大規模で物事を見れてないから、

どんな気分と問われてもピンとこないなぁ。」

 

マルコス「こちらに来て、

一気に色んな情報が入ってきて

まだ頭の中を整理できてないのかもね。」

 

ラウタロ「あちらにいた頃は身近に攻撃をしてくる奴もいたし、

もっと小さい規模でしか戦いというものを意識した事ないな。」

 

フワナ「辛い過去を思い出させてしまった・・?」

 

ラウタロ「過去は過去さ。

今の生活には満足してるよ。」

 

フワナ「ここでは何かあったら私に言ってね!

ラウタロは私が守るから!」

 

ラウタロ「ありがとう。」

 

フワナ「けどね。

脅しや威嚇に対して、

時には立ち向かわなきゃダメよ!」

 

ラウタロ「フワナは、まるで騎士みたいだな。」

 

フワナは、胸を張り得意げに笑った。

 

 

1546年2月11日 キラクラ

バルディビア軍はペンコ湾へ向かう途中、大規模な先住民たちの居住地と対峙する事になった。

 

そこでバルディビアは和平を結ぶ為の使者をこの地域の主要な指導者達に遣わした。

 

 

一方、この地域の指導者達が一同に介しマジョケテの元に集っていた。

 

「あの強大な帝国タワティンスーユさえ、やつらの手先になったと聞く、ここは大人しく従った方が良いのでは?」

 

「マジョケテ殿は南と北と結び徹底抗戦するつもりと聞いていたが、あちらは平和に事を進めたい様だ。」

 

多くの指導者がバルディビアの和平の提案に揺らいでいた。

 

また、南のマプチェ達やアイナビージョ達もその場に集っていた。

 

パルタ「指導者の皆様方、よく集まってくれた。

我が主、マジョケテから話がある。」

マジョケテ「新たな勢力から使者がきたと聞く。」

 

マジョケテが合図すると、バルディビアの使者らしき一人のヤナコナが連れてこられた。

 

「ワシの答えはこうだ。」

そう言うと、マジョケテは使者の側まで行き、そこで聴衆の方に身体の向きを変えた。

 

丁度使者に背を向ける形になり、
聴衆側からは使者の姿が
マジョケテの身体で隠れる形になった。

 

指導者達の幾人かはざわめき出した。

「まさか・・」

 

ビュルルー

 

ボトッ、ボトトッ・・

 

マジョケテは後ろ手で斧を振り回し、使者の四肢と首を切断した。

 

指導者達は狼狽した。

「マ・・マジョケテ殿!!

なんて事を!!

ワシらを道連れにする気か!!」

 

ガルバリノ「おお、まさに梟王マジョケテよ。

背後に目でもあるかの様だ。」

 

マジョケテ「貴君らはあやつらのやり口の詳細を知らぬのか?」

 

指導者の一人が口を開いた。

「どう言う意味だ?」

 

マジョケテ「良いか。

タワティンスーユ程の強大な勢力が

なぜ飲み込まれたと思っておる?」

 

「それは・・あちらの兵器や武器の強力さ・・さらに呪いまで使われて屈したのではないか?」

 

マジョケテ「強大な力を持つのは事実じゃが、

数万の兵がわずか150人程の者どもに負けるなんて、

そんなバカな話があるか?!」

 

「そ、それが信じがたいから、ひとまず対立したくないのだ!」

 

マジョケテ「そのカラクリを教えよう!

それは奴らがタワティンスーユへ友好的な姿勢で近づき、

懐に入ると約束を保護にして皇族を捕らえ支配を始めたからだ。」

 

「奴らは、そんな汚い事をするのか・・信じられん・・

確かに・・それなら納得いくが・・」

 

クリニャンク(私はフタウエ様からタワティンスーユの没落の原因は、呪いの影響が大きいと聞いておるが・・ここは口を挟まないでおこう・・)

 

「あやつらにとって約束など何でもないのだ。

貴君らはこの梟王の目を侮っておるのか!!」

マジョケテは猛禽類の様な目で睨みを効かした。

 

「ま、まあ・・あんたがそういうなら・・」

 

マジョケテ「もし貴君らもあやつらと和平を結べば同じ道を辿るぞ!

実際、地位のあった者たちは傀儡と化し、それ以外は家畜同然に扱われておるであろう?」

 

周りの者達はマジョケテの気迫に呑まれてはいるが、まだ戦う意志までは見えない。

 

マジョケテ(ふむ、もう一押し必要か・・)

 

マジョケテ「まあ良いわ。

まずは、ワシの手のものだけであやつらを挫いてくる!

それから共に戦うなり、あちらと仲良くするなり

決めるがよい。」

 

マレアンデ「僭越ながらマジョケテ様、

その役目、私に仕切らせてくれませぬか?」

 

マジョケテ「ほう、勇ましいのう。

よかろう、マレアンデやってみよ。」

 

マレアンデ「ハッ、お任せください!」

 

マジョケテはマレアンデに耳打ちした。

 

 

-キラクラ バルディビア陣営麓-

マレアンデ達は草むらから様子を伺っている。

 

バルディビア達は丘の上に本陣を敷き、麓には60名程のヤナコナが警備に当たっていた。

 

マレアンデ「私たちは犬死に来た訳ではない。

その役目は他の地域にやらせるのだ。」

 

レポマンデ「それはどういう意味だ?」

 

マレアンデ「マジョケテ様は曰く、どんな手を使っても幾つかの首を刈ってこいと仰せだ。」

 

レポマンデ「なるほどな。」

 

マレアンデ「回収の指揮はレポマンデ、お前に任せる。

私が特攻をかける。」

 

目の前の砦のテントの脇に異国の防具が1組飾られている。

 

マレアンデ「と、レポマンデよ。

混乱に乗じて、あの防具の頭だけでも奪ってこい。」

 

レポマンデ「ああ、考えてる事は一緒だな。」

 

「マレアンデ様!

僕も特攻に参加させてよ!」

 

まだあどけない少年がマレアンデに声をかけてきた。

 

マレアンデ「ロンか。

いや、お前はレポマンデの補佐に回れ。」

 

ロン「えー!

僕の実力は知ってるでしょ?」

 

マレアンデ「お前は私と同じ万能な戦士だ。

もし想定外の事があった時に、お前を失う訳にはゆかぬ。」

 

ロン「そんなに危険な相手なの?」

 

レポマンデ「分からぬ。

ただ、一度相手を知ってから判断した方がよかろう。」

 

マレアンデ「ロンよ。

私はそれだけお前を大事に思っておるのだ、分かるな。」

 

マレアンデは真っ直ぐな眼差しでロンを見つめた。

 

ロン「・・分かったよぉ。

でも次はマレアンデ様の隣で戦わせてよね。」

 

マレアンデ「ああ、約束する。」

 

レポマンデ「マレアンデよ。

相手は見た限り30名足らず、その後ろにまた30名ほど控えている。

見た限り麓はこれだけだが、

ほんとにたった50名で仕掛けるつもりか?」

 

マレアンデ「奇襲の場合は少ない方が良い。

身のこなしの軽いものだけを集めた精鋭だ。

相手の力量を測るのに十分だろう。」

 

レポマンデ「見た感じ、ヤナコナしか見当たらんな。

新たな勢力の奴らというのは何処におるのだ。」

 

マレアンデ「まあ、仕掛けてみれば分かるだろう。

隠れているとしたら、あのテントの中であろう。」

 

ロン「なら、僕はテントに気を配ってるね。

何かあったら、コイツをお見舞いしてやるから。」

 

ロンは幾つもの石ころを手に取って得意げに、マレアンデ見せた。

 

マレアンデはロンの頭を撫で、周りに号令を掛けた。

 

マレアンデ「皆の者!

この50名は一つの槍だと思え。

私を先頭に突進し一気に殲滅する!」

 

レポマンデ「回収班はマレアンデ隊の動向を気にかけながら

状況に応じて援護し、死体の首をとって来い!」

 

「ハッ!」

 

マレアンデは軽く手を挙げ静止し、

数秒後に腕を下ろした。

 

マレアンデ隊は音もなく鋭く切り込み、瞬く間に前線に位置するヤナコナ30名を殲滅した。

 

ドサドサ

 

レポマンデ「ん?何だ!

いくらマレアンデ隊が強力とは言えあまりにも脆い。

こんな烏合の衆しかおらんのか?」

 

ヤナコナ「敵襲!!」

 

マレアンデ隊は雄叫びを挙げ、第二陣に突っ込んでいった。

 

レポマンデ「マレアンデ隊は最初の衝突で勢い付いてるな!!

では、我々は回収に行くぞ!」

 

オオ!

 

レポマンデ隊は、死体の首を刈りながら回収していった。

 

レポマンデ「ロン、俺と一緒にお前はあのテントに行くぞ。

用心して近づけ。」

 

レポマンデ達はそっとテントに近づいた。

 

レポマンデ(人の気配がまるでないな、取り越し苦労か・・)

 

レポマンデがテントの中を確認した矢先、悲鳴が上がった。

 

ギャー

 

レポマンデ「この声は、マレアンデ隊のやつらか?

何が起こってる?!」

 

レポマンデは、テントの外に出ると信じられない光景が広がっていた。

 

ヤナコナの第二陣にたどり着く前に、

マレアンデ隊の者達が倒れ、立っているのはマレアンデのみだった。

 

その先には、異国の装いをした男がヤナコナ達の後ろに控えていた。

 

レポマンデ「・・一体何が?」

 

 

-数時間前 バルディビア本陣-

アルデレテ「バルディビア様、原住民の長達に友好関係を結ぶ使いを出したとか?」

 

バルディビア「うむ、戦わないに越した事はないであろう。」

 

アルデレテ「やつらは乗ってきますかね?」

 

バルディビア「アルマグロ派だった者達の話によると

奴らはかなりの蛮勇らしい。

突っぱねてくる可能性が高いかも知れぬな。」

 

オロ「この丘に陣取ったのは、上策ですな。

仮に奇襲してきた所で私たちの元へはすぐ辿りつけますまい。」

 

アルデレテ「とは言え、前線には備えさせておく必要がありますな。」

 

ネイラ「ならば、前線の守備は私めが引き受けましょう。

60名ほどヤナコナを駆り出してくだされ。」

 

アルデレテ「なんと60名足らずでなんとする?」

 

ネイラ「もちろん大軍で攻めてくるならば、本陣の方へ救援を求めます。」

 

アルデレテ「しかし、ヤナコナ達とネイラ殿だけで望むおつもりか?

そんなに貴殿は腕が立つのか?」

 

ネイラ「いえ、300名たらずであれば、私1人いれば十分でございます。」

 

バルディビア「ほう、興味深いのぅ。

面白い!

戦場のマエストロの腕前拝見させて頂こう。」

 

ネイラ「ただ条件がございます。

ヤナコナの選定において、30名は戦に不向きな使い捨ての者達で構いません。

残りの30名は力仕事に向いてる者達を用立ててくださいませ。」

 

アルデレテ「?」

 

オロ「ネイラよ、あれをやるのだな。」

 

ネイラ「はい、集めた情報から鑑みて

上手くハマる事でしょう。」

 

バルディビア「何が始まるのかのぅ。

楽しみだわ。」

 

 

-バルディビア陣営麓-

マレアンデはヤナコナを隔てて、ネイラと対峙していた。

 

ロン「マレアンデ様に加勢にいかなくては!!」

 

レポマンデ「待て、ロン!」

 

レポマンデ兵「マレアンデ様ー!」

 

マレアンデ「来るな!!

私は大丈夫だ!

お前達はさっさと回収して、撤退しろ!」

 

ネイラ(ほう、兵数の優位はあちらにあるのに撤退を選ぶか

あの指揮者は蛮勇ではないのか?

我が仕掛けの脅威を察した、

あるいは他の目論見があるのか?)

 

レポマンデ「何が起きてるんだ?!

ん?あれは・・?」

 

レポマンデはヤナコナの第二陣の前に無数の穴が空いているのに気付いた。

 

レポマンデ「落とし穴か?」

 

また、穴に落ちてない死体には、四方八方から矢が突き刺さっていた。

 

レポマンデ「弓隊を潜ませていたのか、

・・しかし何処へ?

ヤナコナ達は斧しか持っておらぬぞ。」

 

ロン「レポマンデ様、あれ見てよ!」

 

死体の山の両脇には沢山の柱が設置してあった。

その柱は無数の矢を放つ様な仕掛けが施されている様だった。

 

レポマンデ「そういう事か。

あやつらは、一陣の兵をわざと弱兵にして勢いづかせのか?

深く入り込ませたとこで、

罠で殲滅させたという所か。」

 

ロン「マレアンデ様もかすり傷を負ってるよ。」

 

レポマンデ「あのマレアンデすら、傷を負うとは

侮れん仕掛けだ。」

 

ロン「マレアンデ様を助けに行かなきゃ。」

 

レポマンデ「いや、あいつが大丈夫と言ってるんだ。

俺たちは任務を全うしよう。」

 

レポマンデはそういうと、鉄製の兜を抱えて撤退の指示始めた。

 

マレアンデ(よし、そろそろ動くか。)

 

マレアンデは後退を始めた。

 

ネイラ(ふむ、再び浴射ポイントに入ったな。)

 

ネイラは手を挙げた。

 

ニナ「撃て!」

 

一斉にマレアンデに柱の装置の矢が襲いかかった。

また、中央から無数の斧が飛んできている。

 

マレアンデ「舐めるなよ!」

 

マレアンデは走りながら槍を回転させ

矢や斧を弾いている。

 

(これはまだ良いか・・)

ネイラは小銃を眺めながら呟いた。

そして、側にある槍を手にし投げた。

 

ヒュルルー

 

投げ槍は綺麗なスパイラルを描きながら、マレアンデに真っ直ぐ向かって行く。

 

マレアンデ(しまった!!)

 

投げ槍はマレアンデの心臓に真っ直ぐに進んでいる。

 

その刹那

 

ガッガッガッ!

 

幾つもの礫が投げ槍にぶつかり軌道を変え、マレアンデから逸れていった。

 

ロンは得意げにマレアンデを見ている。

 

マレアンデ「ロン、よくやった。」

 

マレアンデ達はその場を後にした。

 

ネイラ(ほう。やつらの中には尋常じゃない身体能力を持つ者がいる様だな。

しかも目的は死体回収か、そういった変わった習慣があるのか?それとも何らかの体裁を整える為か?)

 

 

-マジョケテ陣営-

マレアンデ「マレアンデ只今、帰還しました!」

 

マジョケテ「どうしたのじゃ、お前ほどの者が傷を負うとは・・

未知の武器と遭遇したのか?」

 

マレアンデ「未知の武器といえばそうですが

奇怪な矢の装置と落とし穴により50名ほど兵を失いました。

申し訳ございません。」

 

アイナビージョ「奇怪な装置じゃと。

噂の雷を出すまでもなく、こちらは為すすべなくやられたというのか?」

 

マレアンデ「いえ、こちらもしっかりと相手を仕留めてきました。

その証拠をここへ。」

 

レポマンデは、鉄製の兜を被った首を見せた。

 

周りの者がざわつき出した。

「おお、これは!

あのミチマでさえ、1人倒すのに手こずったのを

マレアンデ達も仕留めてきたというのか!」

 

マレアンデ「おそらくミチマの倒した者は大分手練れだったのかと。

私ごときでも造作もなく倒せました。」

 

「おおおお!」

 

ミチマの強さはここキラクラの人々の間でも轟いており、マレアンデの話を聞いて辺りは希望に満ちていた。

 

アイナビージョ「して、そやつの武器はどうであった?」

 

マレアンデ(まあ、聞いてくるよな。)

 

マレアンデ「私たちと同じ斧を持っておりました。

腕前であるならば、マプチェ族、そしてモルチェ族の皆様方の方が上だと感じました。」

 

周りはさらに湧き立った。

「そうよなぁ。

俺らは生粋の戦士の集まり、何処ぞの者達に劣るわけが無かろう!」

 

マジョケテ(流石、マレアンデよ。こやつらの士気も上がってきおったわ。)

 

クリニャンク「ん?その首、ワシに見せてくれぬか?」

 

そういうとクリニャンクはまじまじと首を見つめ、首の目を開いた。

 

クリニャンク「こやつらの目は青いと聞いておったが・・しかも肌は白いという情報もあったぞ。」

 

マレアンデ(この爺さん・・抜け目ないな・・

念のためなるべく肌の白そうな首に兜をつけたが

厳しいか・・そうだ)

 

マレアンデは戦場であった異形の服装をした男を思い出した。

 

マレアンデ(確か、あの男・・目も青くなかったし、肌もそんなに白くなかったぞ。

きっと、全員がそういう訳ではなさそうだな。)

 

マレアンデ「どうやら新たな勢力の者どもは、肌の色や目の色も多種多様の様でした。

おそらく、目の青い者はもっと強い可能性もあるかもしれませんね・・」

 

マレアンデ(う・・苦しいか)

 

マジョケテが興奮気味に言葉を発した。

「クリニャンクよ!

我らは50名の同胞を失っておるのだぞ!

彼らの勇姿にケチをつける気か!!」

 

クリニャンク「申し訳ない。ただ、念には念を入れて情報を仕入れたいだけじゃ、悪く思わんでくれ。」

 

マジョケテ「分かってくれればいいのだ。

すまなかった。

声を荒げてしまって・・

同胞が多く死に気が立っていた・・許しくてくれ。」

 

クリニャンク「そうだのう。実際無数のヤナコナの首や身体を持ち帰っておる。

マレアンデの功績は紛れもないものだろう。」

 

マジョケテ「分かってもらえるか。」

 

クリニャンクはゆっくりと頷いた。

 

マジョケテ「さて、本題に入るかの。

ワシたちは、やつらに夜襲をかけようと思うのだがどうじゃ?」

 

アイナビージョ「梟王よ。

夜襲はヌシらが得意とする所だが・・

モルチェ族が主導でしっかり指揮してくれるんだろうな?」

 

マジョケテ「もちろんだ、何処に進めば良いか的確に指示をする。

ましてやここにお集まりのモルチェ族の方々も夜襲を得意としておる。

南の方々は、信頼して突き進むのみだ!

任せてくれ!」

 

「おお、頼もしい限りだ。

ワシらの能力を存分生かせるわけだな。」

モルチェ族の者達も意気揚々としている。

 

(上手く乗せることが出来たな。)

マジョケテは俯きながら笑みを浮かべた。

 

マジョケテ「では、皆様方!!

出立の準備じゃ!」

 

クリニャンク「してマジョケテよ、どの様な配置にするつもりだ?」

 

マジョケテ「中央前線はアウカマンの軍、中軍にはパルタ、後方には我が軍とアイナビージョ軍が布陣する。

右翼はクリニャンク、ミジャラプエの連合軍に任せる。」

 

ミジャラプエ(順当な所じゃろう。)

 

マジョケテ「皆のもの!!

モルチェ、マプチェ連合の恐ろしさ、とくと味合わせるぞ!!」

 

おおおおぉ!

作成中/アラウコの叫び本編

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