🔴第11話「潜入前夜」

ナウエル(ふぅーうまくいったか。さてすぐにこの場を離れよう)

 

ガッ!

 

ナウエルは背後から首を打撃を加えられ倒れ込んだ。

 

そこには、黒い甲冑に赤いマントを羽織り、立派な髭を蓄えた、唯ならぬ雰囲気の男が立っていた。

 

バルディビア「この小僧には足枷もつけよ。」

 

兵士「ハッ」

 

カセレスやニナが意識を取り戻した。

 

カセレス「バルディビア様・・すみません。」

 

バルディビア「気にするな。お前程の者が遅れをとるとなるの、この小僧はかなりの使い手ということだろう。」

 

カセレス(バルディビア様は分かってるなぁ。)

 

バルディビア「しかしこの地域は、子供さえこんな感じなのか?侮れん。」

 

カセレス「ん?なんだヤナコナ?

バルディビア様、何やらこのヤナコナが何か言いたいことがある様です。」

 

バルディビア「話せ。」

 

ニナ「発言の許可を頂き有難うございます。

先程の小僧ですが、いくらマプチェどもが小さい頃から戦士のふるいにかけられると言え、こんなに強い奴はそうはいないです。

アイツは名のある戦士の息子の可能性が高いです。」

 

バルディビア「ほう、何かに使えるかもしれんな。

この小僧は特別な牢へ入れておけ。」

 

アルデレテ「バルディビア様、私の人選ミスです申し訳ございません。

こんな奴に任せたばっかりに。」

 

カセレス(アルデレテの野郎・・)

 

バルディビア「いや、結果的に何も損はしていない。
むしろ面白い事が知れたではないか。」

 

アルデレテ、カセレス「寛大の処置痛み入ります。」

 

アルデレテは舌打ちをした。

 

バルディビア「アルデレテ、ついて参れ。」

 

アルデレテ「ハッ。」

 

バルディビアとアルデレテは砦の中へ入って行った。

 

アルデレテ「バルディビア様、カセレスに甘すぎではないですか?」

 

バルディビア「まあ、そう言うな。あやつは腕もそこそこ立つし、商才もある。

きっと今度のお前の航海で役に立つ。」

 

アルデレテ「待ってください。あやつも同行させる気ですか?!」

 

バルディビア「そうだ。パステネの船には、お前とオロ殿、そしてカセレスで行ってもらう。」

 

アルデレテ「アイツと馬が合わないのは、バルディビア様も知ってるでしょう?今回もそうですが。」

 

バルディビア「アルデレテよ、ワシはより壮大な力を掴む。

そうなった時、カセレスらのような者達は強力な力になる。」

 

アルデレテ「しかし・・」

 

バルディビア「よいか。お前もこんな盗賊な様な暮らしで終わるつもりではないだろう。

もっと高みを見よ。」

 

アルデレテ「はあ、努力します・・」

 

バルディビア「そう言えば先程、オロ殿がここへ着いた。

近況を聞くのも兼ねて、オロ殿に会いに行くぞ。」

 

バルディビア達は部屋に入ると、すぐさま男の声がした。

 

オロ「総督、只今到着しました。」

部屋にはエキゾチックな衣服を纏った貴族風の男が、バルディビア達を待ち受けていた。

 

オロ「ささ、こちらへ。」

 

バルディビア「相変わらず素敵な出たちですな、オロ殿」

 

オロ「これは本国よりはるか東方から取り寄せた衣服でございます。」

 

バルディビア「ほう。ちなみに新大陸でもお気に召す物があったかな?」

 

オロ「残念ながら今の所は・・」

 

バルディビア「左様か。まあ、チリにはまだ知らぬ富が溢れてる。ワシはそう確信しておる。」

 

オロ「期待しております。」

 

バルディビア「さっそく本題に入るが、パステネの輸送隊の件はどうであった?」

 

オロ「ご友人のバカ・デ・カストロ殿が70人の騎馬兵と馬、物資を提供して下さいました。
航路と陸路を駆使して、無事こちらに移送を終えた所です。
また、モンロイ殿が縁故の者を加えて、ピサロ派、アルマグロ派問わず頼もしい者達を加える事に成功したそうです。」

 

バルディビア「友よ・・恩に切る。」

 

オロ「そして、そのカストロ殿の事なんですが・・」

 

オロの話の途中でアルデレテが口を挟んだ。

 

アルデレテ「なんと!各派閥の者を加えたと?!

バルディビア様、そやつらの重要な役職を与えてはなりませんぞ。

この前の貴方の暗殺未遂の陰謀の件もありますし。」

 

バルディビア「分かっておる。その為にお前がいるのであろう、アルデレテ。

新たなに加わった者たちも重々承知で傘下に入ったのであろう。」

 

オロ「おっしゃる通りです。

そして、今は頭数が必要な時期。

アルデレテ殿、私めも尽力するので心配なさるな。」

 

アルデレテ「もちろんオロ殿がいてくだされば私も心強い・・」

 

バルディビア「してオロ殿、ペルーの様子はどうであった。」

 

オロ「その件なのですが、初めにお伝えするべきでしたが、誠に由々しき事態が起こりました。

カストロ殿に変わりベラスコ・ヌニェス・デ・ベラ殿へペルーの統治権が移りました。」

 

バルディビア「やはり、そのような事態になったか・・

しかし、随分な堅物をお上はよこしたものだな・・

いち早くコリャスーユの件に関して動いてて正解だった。」

 

オロ「はい。そして、残念の事にカストロ殿はヌニェス殿に不正の疑いをかけられカサ・レアルに監禁されてしまいました。」

 

バルディビア「なんと・・友よ。」

 

オロ「ただその件はご安心ください。

すでに手は打っております。」

 

アルデレテ「ほう、流石ですな。」

 

オロ「実は、今はヌニェス殿は取り締まりを強化する所ではない状態です。

実はゴンサロ・ピサロ殿がヌニェス殿に反旗を翻し、交戦状態になっております。」

 

バルディビア「ピサロ殿の異母弟の狂人ゴンサロか。

政府に背くとは奴らしいわ。」

 

オロ「そこでヌニェス殿はゴンサロ殿との交戦を備えて、不穏分子であるカストロ殿の一派をカサ・レアルから移送を試みました。

その時私めが監視者の一部を抱き込み、無事パナマへカストロ殿を逃しました。」

 

バルディビア「オロ殿、友の変わりに私からも礼を言う。

この恩はしっかり返させてもらう。」

 

オロ「有難うございます。」

 

バルディビア「しかし、今のうちにコリャスーユでのワシらの立ち位置強固にしたい所だな。」

 

オロ「そこでなのですが、一つ提案が。

カストロ殿の腹心にコルドバという者がいます。

彼はカストロ殿が更迭された後、ゴンサロ殿の側についています。」

 

アルデレテ「ほう、分かりましたぞ。

彼を支援して戦を長引かせるという訳ですな。」

 

オロ「流石、アルデレテ殿。ご名答です。

そしてコルドバはゴンサロ殿についたものの、ソリが合わなく鬱積した日々を送ってるとの事です。」

 

バルディビア「ほう。」

 

オロ「コルドバはカストロ殿の配下で特に武勇に秀でてた人物と評判です。

頃合いを見てこちらの傘下に引き込む算段を取られてはいかがですか?」

 

バルディビア「悪くないな。それに、カストロの配下であったなら、良いポストを用意しても問題なかろう。」

 

オロ「私の見立てでは、ゴンサロ軍はいずれ壊滅します。

我々は頃合いを見てスペイン政府に参戦し、その時にコルドバと内応し、一気に決着に向かわせるのが良いかと。」

 

アルデレテ「素晴らしい絵ですな。政府からの我々の評価も上がる。」

 

パンパン

 

オロは手を叩いた。

 

1人の聡明そうな男が物陰から現れた。

 

アルデレテは一瞬剣のつかに手をかけた。

 

オロ「驚かせてしまい、申し訳ございません。」

 

アルデレテ「いくらオロ殿とは言え、このような内々の話に他の者を潜ませているのは感心しませんな。」

 

オロ「いきなり込み入った話になり、紹介する暇がありませんでした。」

 

バルディビア「してその者は?」

 

オロ「この男は、アンドレス・デ・ネイラという者で、名うての傭兵です。」

 

ネイラは深々と会釈をした。

 

アルデレテ「傭兵ですと?!」

 

オロ「傭兵とは言え、口が固く誇り高き男です。」

 

バルディビア「アンドレス・デ・ネイラ・・どこかで聞いた気が。

あの<戦場のマエストロ>と呼ばれる者か?」

 

「私の事をそう呼んでいた者たちもいましたね。」

ネイラの声は、人に安堵を与える様な不思議な魅力を持っていた。

 

バルディビア「こんな所で会えるとはな。

いつからか忽然と姿を消したと聞いたが・・」

 

オロ「ハハ、私が雇用してからは表舞台で彼の姿を見たものはおりませぬ。

実の所、今語った絵図や情報分析はネイラからです。」

 

アルデレテ「他の者と契約したら我々の話が漏れてしまうのではないか?」

 

オロ「その点はご安心を。ネイラは私との契約が切れた後は傭兵から足を洗うそうなので。」

 

バルディビア「確かに<戦場のマエストロ>は言った事は必ず遂行すると聞いておる。」

 

オロは上品な笑みを浮かべた。

 

オロ「先程の話の続きですが、このネイラをコルドバの元へ補佐としてつけてはいかがでしょうか?

コルドバは勇猛ではありますが、いささか知恵が回りませぬ。

そして、ネイラの顔を知る者は両軍にいないでしょう。」

 

バルディビア「うってつけという訳か。

よかろう、直ちに手筈を整えさせる。」

 

オロ「はい、きっとうまくいきます。」

 

 

-南マプチェの居住地-

ラウタロ「はぁはぁ、

ナウエルが奴らに連れされた。」

 

アウカマン「昔を思い出すな。」

 

フタウエ「案ずるな。

まだナウエルは生きておる。」

 

ラウタロ「なぜ、そんなに落ち着いていられるんだ?

今回はアリカントの時とは訳が違う!!」

 

フタウエ「これは運命じゃ。

ただナウエルはまだ死ぬ運命にはない。」

 

ラウタロ「アウカマン、あんたの子だろ?!」

 

アウカマン「実はこういう日が来る事をフタウエ様から事前に聞かされていた。

フタウエ様とて全てが見える訳ではないが、予言された事は今まで外れた事はない。」

 

ラウタロ「だからって・・」

 

アウカマン「ラウタロ、まずはどんな状況だったか説明してくれないか?」

 

ラウタロは皆に一部始終を話した。

 

アウカマン「そうか、射程に入ればナウエルすら躱す事が出来ない武器を所持してるのか、あちらは・・」

 

エルネイは遠くでその光景を明後日の方を向いて聞いていた。

 

 

リカラエン「落ち着いたか?

ラウタロ、とりあえず飯食べるぞ。」

 

ラウタロは母に連れられルカに入るとクリナンチュ、グアコルダ、ツルクピチュン、リチュエンがいた。

 

厚手の鍋を中心に様々な料理が所狭しと置かれていた。

 

ラウタロ「・・今日は豪華だな。」

 

今回の祭事で様々な地域の食材が手に入ったからね。

 

リカラエン「早速食べるよ。

ほらお前の好きなチョチョカが丁度今出来上がった所だ。」

 

ラウタロ「やはりチョチョカは焼き立てが美味しいな。

特に今日の出来は格別だな。

外のカリカリとした食感と、内部の水分を含んだ味わいの二重構造が際立っている。」

 

ツルクピチュン「チョチョカは二層構造になってるだけでなく、何層にも折りたたまれてるので、一噛みすれば異なる食感が幾重にも広がり複雑な味を醸し出していますね。」

 

リカラエン「そうチョチョカは何層にもわたる味は、私達の歴史の歩みそのものを噛み締めている様なものさ。」

 

ツルクピチュン「しかも、ラウタロの家のチョチョカは全ての層が違う味を醸し出している。

他で食べるチョチョカとはまるで違う。」

 

リカラエン「基本的にはジャガイモの皮を剥き、すり潰して、手でコネて平べったくしてから、折りたたんで、棒に刺して焼くのは変わらない。

けどのウチの場合は、折りたたむ前に各層にあたる部分を計算して様々な味を加えているんだ。」

 

ツルクピチュン「道理でより複雑な味がする訳だ。」

 

ラウタロ「ああ、母さんのチョチョカは別格だ。」

 

ツルクピチュン「ただ、ジャガイモの味にもきめ細かさを感じるのはなぜですか?」

 

リカラエン「よく気付いたね。

ウチのチョチョカは、父さんとの共同料理なのさ。

父さんのジャガイモをすり潰す腕はこの地域一だよ。」

 

ツルクピチュン「クリナンチュさんまで料理をされるんですか?!」

 

クリナンチュ「ハハ。まあ共同料理とは言ってるが、ほぼ私が作っているのだよ。」

 

リカラエン「あんた、余計な事言うんじゃないよ笑」

 

クリナンチュははにかんだ。

 

黙って食べてたリチュエンが口を開いた。

「この地は変わってますね。女性だけでなく、男性まで料理をするなんて。

それだけでなく、強さ以外にも価値を見出している。」

 

リカラエン「そうだねぇ。

この地は各々の可能性を狭めない為に、男だからとか、強いからとかという基準でものを見ないんだ。

ウチの父さんはこの地の考え方の結晶みたいなものさ笑」

 

リチュエン「この地に暖かさを感じる。

価値ある者と価値のない者に分類された世界、それが普通だと思ってきた。」

 

リカラエン「白黒はっきりしてる世界は厳しくもあるけど、楽な部分もある。

逆に私たちの考え方かたが生きづらい者もいるだろうな。」

 

リチュエン「どういう事ですか?

俺にはここの地が居心地よく感じます。」

 

リカラエン「例えば白黒はっきりしてある場合は、足元にしっかり大地がある。

けれど、この地ではグラグラした綱の上に立っていながらも笑ってるそんな所さ。」

 

リチュエン「いまいち分からないです・・」

 

「おっやってるな!」

ルカへ更に大き人影が2人入ってきた。

 

クリナンチュ「アウカマン、エルネイやっときたか。」

 

アウカマン「ご馳走になりにきました。」

 

 

「おっ、これが噂の西方の食べ物だな!

なんか見た目はなんとも言えないが・・」

エルネイは並べられている料理の中に貝を発見した。

 

グアルコルダ「お兄ちゃん!またそんな事を言って。」

 

リカラエン「いや、エルネイの言う通りさ笑

けど、悪くない味だよ。

ただ、外側はお前さんでも食べちゃダメだよ。」

 

「ああ、これはこうやって食べんだ。」

クリナンチュはエルネイに貝の食べ方を教えた。

 

エルネイ「ちょっとしょっぱいがなかなか良い味だな。

ここの食材と合わせて何か新しい料理ができるかもな。」

 

リカラエン「お前さん期待してるよ!」

 

クリナンチュは照れくさそうな仕草をしている。

 

クリナンチュ「みんな揃った事だし、この鍋を食べてみてくれ。

ジャガイモと豆を煮込んだものだ。

今回は様々な薬草も手に入ったので特別な仕上がりになってる。」

 

アウカマン「ああ、豊穣の地からだな。」

 

ラウタロは一瞬険しい顔になった。

 

エルネイ「くぅー染み渡るねぇ。香りの良さといい、豆すら口の中でとろけるようだ。」

 

リチュエンは、ひと口食べるごとに目を輝かせ、味わい深さを噛み締めている。

 

アウカマン「クリナンチュの先祖代々から伝わる鍋は宝だな。

この料理はまるで大地の恵みそのものだ。」

 

エルネイ「この厚手の鍋がじっくりと煮込む事を可能にし、熱を均等に保ち、食材の味を引き出しているんだろうな。」

 

リカラエン「エルネイ、あんたも良い料理人になれるよ笑」

 

エルネイ「どうかな?感想を言えるのと作る事は全く別かもしれないぞ。」

 

「さて、そろそろ飲み始めるか!」

クリナンチュは、チーチャと呼ばれる果実酒を持ってきた。

 

「俺はムダイがいいなぁ。あのとうもろこしの味がなんとも言えない。」

エルネイがリカラエンを横目で見ながら言った。

 

リカラエン「ダメだからね、チーチャで我慢なさい。

ムダイは儀式の時にしか飲めない酒なんだから。」

 

エルネイ「お願いしますよ~

<ピリャンの巫女>の末裔なら少しぐらい良いじゃないか。」

 

リカラエン「エルネイ、あんたももうすぐ南へ行くんだろ。

旅路の祈願の時に飲めるはずさ。

その時まで我慢しな!」

 

エルネイ「へいへい。

ところでお前らもそろそろチーチャ飲んでみるか?」

 

ラウタロたち子供たちにエルネイはチーチャを飲ませようとした。

 

グアルコルダはサッと器を取り飲みだした。

 

一同が驚いた。

 

クリナンチュ「おお、良い飲みっぷりだ!」

 

エルネイ「実は、こいつは既にをチーチャの味を知ってるんだ。」

 

アウカマン「しかし、顔色一つ変わらないとは流石エルネイの妹だな。」

 

「さっ、お前も飲め。」

エルネイはラウタロに器を手渡した。

 

「飲んでみるか。」

ラウタロは横にいるグアルコルダを気取られぬ様に平静を装いながら、チーチャを飲み干した。

 

ラウタロの顔が赤くなった。

 

ラウタロ「これがチーチャか。何か開放的な気分になるな。」

 

エルネイ「おいおい、一杯でこれかよ?

羨ましいねぇ。」

 

「ちょっと風に当たってくる。」

ラウタロはそう言うとルカの外に出た。

 

 

ラウタロは切り株に座り星を眺めていた。

 

ラウタロ(こうやって、皆で食事をしたのは久々だな。

ナウエル・・お前もいれば良かったのにな。)

 

バサッ

 

「ラウタロ大丈夫?」

 

グアルコルダがラウタロの隣に座ろうとした。

 

「いや、お前はここに座れ。」

ラウタロは切り株から腰を下ろし、グアルコルダに譲った。

 

グアルコルダ「有り難う。」

 

グアルコルダはラウタロの隣で、しばらく星を眺めていた。

 

グアルコルダがふと話し始めた。

 

星が私たちを見ている

空が私たちを見ている

 

マプチェである私たちは星から来て

地球に舞い降り、ここで生活を学んだ

幾度も死しては星座の一つとなってきた

 

グアコルダ「そんな話を小さい頃から聞かされてきた。

本当に私たちって星になるのかな?」

 

ラウタロはじっと輝く星々を見つめている。

 

ラウタロ「・・どうだろうな。

大人たちは運命を信じ、揺るぎない心で生きている。

けど、俺は盲目的に信じる事はできない。」

 

グアルコルダ「私もそう。

今はお兄ちゃんみたいな存在は奇跡だって実感はあるし、奇跡に慣れてはいるけど、だからといって全ての神秘的な事を信じ切る事は出来ない。」

 

ラウタロ「歳を重ねると信じ切れるものなのかな。」

 

グアルコルダ「ふと思う時があるの。

仮に星になれたとして、それはどんな気分なんだろうって。」

 

ラウタロ「こうやって星を眺めてても綺麗だと感じる。

ただ、それは日々の紆余曲折があるから感動も強いんだと思う。

星になるって、ただ浮き沈みもなく綺麗なものだけを眺める日々みたいなものなのかな。」

 

グアルコルダ「確かにこのまま人の感覚であるなら、星なる暮らしはつまらないものなのかもね。」

 

ラウタロ「ただこうして星を眺めながら語り合う、少なくともこのひと時は、素晴らしいものだ。

人としての感覚ではな笑」

 

グアルコルダも微笑んだ。

 

ラウタロ「グアルコルダ、またこうしてお前と星を眺めながら語れるのを楽しみにしてるよ。

皆んなで食事は心が温まった。

今日は辛い事もあったけど、良い日だった。」

 

2人はルカに戻っていった。

 

 

 

太陽がもうじき昇る頃、1人その地を後にしようとしている者がいた。

 

ある男が柱にもたれ掛かりながら引き留めた。

「行くのか?」

 

去ろうとしていたラウタロにエルネイが声をかけた。

 

ラウタロ「ああ。

救出に向かうのもあるが、俺は奴らの事をもっと知っとくべきだと考えている。」

 

エルネイ「そういう事だろうと思ったぜ。

まっ、お前の事だろうから上手くやるだろう。」

 

ラウタロ「あんたは南方へ今日立つのか?」

 

エルネイ「そうだな。

次、お前と会う時は戦場かもな。

じゃあな。」

 

ラウタロは歩き始めた。

 

 

※チリ南部の厳しい気候の中で、限られた資源から栄養価の高い食事を摂る為に、主にジャガイモと豆は主要な食材であった。

 

チョチョカはいつから作られていたかは不明である。

 

チョチョカに関しては、ヨーロッパ人がこの地に来て以降、現在では小麦粉など新たな食材も加わり、変化していった。

 

また西洋文化が入って来る前までは、肉を摂らずじゃがいも、とうもろこしなどの穀物、豆や薬草、木の実、貝類などの魚介が食の中心だったとも言われている。

 

グアナコや鹿などの狩猟も行われたり、鶏などを食べてたという話もあるが、いつからなのか定かではない。

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